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彰義隊
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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激動、激変を推進する者、拒む者の人生ドラマ
吉村昭の長編歴史小説は、読み切るのは相当ハードではないだろうか。見出しから漢字だらけ、登場人物も多く、とっつきやすい読み物とは言えない。私は吉村昭の著書で評判だったものを選んで読むことを試みた事があるが、途中で挫折している経験をもつ。
ところがこの彰義隊は最後まで読み通せた。正直、「彰義隊」に興味をもっている人が、彰義隊のドラマ中心の小説だと思って読むと、失望することは間違いないだろう。彰義隊を記述している部分は、読後感から言えば量として1割以下だし、この小説の主人公は誰かと敢えて問われれば、輪王寺宮という幕府側についたために、落ちに落ちてゆく皇族の話といえるからだ。
しかし、世の中が変わらざるを得ない状態になりつつある時、体勢を一挙に変えようという一派が登場し、旧来から続いている体勢内でステータスをもった者たちは、それらを政敵と考え、葛藤し、そして憎み、勝利するもの、負けるもの、。そういうドラマとしてこの小説「彰義隊」を読むと大変面白かった。
変化側と非変化側と争い、殺し合いまでしても、実は時代が落ち着いてくると、次第に過去の体制側の部分部分を少しずつ容認するようになところが新体制でも出てくる。それはあの時代も今も変わらないのではないか。最近会社内で大きな激動があって、この小説を読んで思うこともあった。
題名に偽り
はっきり言う。これは彰義隊の物語ではない。幕末の輪王寺宮から明治の北白川宮能久親王に変わった皇族の物語だ。彰義隊の結成からその壊滅はあくまでもその皇族の数奇な運命の一背景に過ぎない。ページ数でも2割程度。隊士の名前も渋沢、天野など頭取クラスしか記されない。吉村氏の重厚な歴史物の愛読者が彰義隊正史として買い求めると大変な幻滅である。
ただ、維新裏面史としての興味はあり、薩長に抵抗した旧老中や大名の「その後」が描かれているのは星1つ分に相当する。
数奇な運命
数多くの幕末物を読んできましたがこの作品は一風変わった味わいがあります。長編ですが興味深く一気に読みました。動乱の時代はいつも混沌として価値観が定まらず、冷静に考えれば極めて理不尽なことが行われてしまいます。この物語でも幕府の側にあったというだけで小栗、板倉、小笠原、松平容保、定孝兄弟などの有能な人々が殺されたり、表舞台から葬り去られてしまいます。相手に対してもう少しの理解と寛容があればと思います。この後の十年間に大久保利通は暗殺され、西郷隆盛も自分の意に反して逆賊になってしまい、不遇の死を遂げてしまいます。何時の世でも相手の状況、立場を冷静に考え、対処していけば無用な混乱や争いは避けられるはずです。議論の分かれるところですが徳川慶喜が部下を見捨てて大阪城から脱出したことはやはり自分自身の保身に走ったとしか見られない。対照的に悲惨な結末を迎えてしまいますが松平兄弟の潔さには感銘を受けます。物語は淡々と進みますが吉村昭さんらしい抑えた筆致でかかれた良い作品だと思います。
冗長というか退屈
彰義隊というからには、もっとダンディズムやヒロイズム に基づいて書いてあるかと思えば、さにあらず。登場人物達 も、ただただ無責任というか身勝手というべきか、成り行き 任せの感がぬぐえません。 序盤はそうでもありませんが、上野の戦いが終わった辺り から、非常に冗長というか退屈に感じます。作者がそういう 人なのかも知れませんが、もっとエネルギッシュに書いても よかったのでは?と思います。
朝日新聞社
暁の旅人 吉村昭の平家物語 (講談社文庫) 事物はじまりの物語 (ちくまプリマー新書) 回り灯篭 わが心の小説家たち (平凡社新書 (001))
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